北日本消毒(小樽市港町)は7月1日付けで、新社長に同社常務の湊亨さんが就任したことを発表した。社長だった湊晃一さんは、会長に就任。
同社は害虫・害獣駆除や悪臭消臭、遺品整理などを取り扱う環境衛生企業。1982(昭和57)年に湊亨さんの父・湊晃一さんが創業。創業前年に、勝納ふ頭、色内ふ頭が相次いで完成し、小樽の港湾業が隆盛期を迎える中、同社は、ニーズの高まった港湾倉庫内の害虫・害獣駆除に対応し、業績を拡大。同時期に食品衛生に対する関心が高まると、飲食店などからの衛生管理に関する依頼が急増する。現在は、鹿やアライグマなど、大型の害獣にも対応するほか、行政などからの委託で犬や猫の保護、食品衛生に関するコンサルティングなど、業務は多岐にわたる。
亨さんは1976(昭和51)年生まれ。小樽生まれ小樽育ち。「家族は、妻と8歳の娘、猫(スコティッシュフォールド)。趣味は日本酒」と言う。さまざまな団体に所属し、まちづくりにも積極的に取り組んでいる。小学校に入学する前に、父の晃一さんが同社を創業し多忙を極め、母は保険の外交員で家を空けることが多かったという。幼い頃から、祖父母からの愛情に育まれながらも、どこか寂しかった子ども時代を過ごしたというのが正直な思いと語る。地元の高校卒業後、札幌の大学に進学すると、周りと同じようにリクルートスーツに袖を通し、説明会や入社試験に臨む日々を迎える。それでも、「自分のやりたいことが分からなかった」という亨さんは、就職先も決まらぬまま卒業。なすすべもなく、父のもとでアルバイトを始めた。
「汚い仕事で嫌だなあ」と思いながら始めた仕事でも、さまざまな業務や出会いを通じ、考えが少しずつ変わっていった。「きれいにしてくれて、ありがとう」「おかげで業務が改善できた」など、顧客から喜びの声を聞き、「汚い仕事」ではなく、「きれいにする仕事」「安心・安全を提供する仕事」と考えが変わっていった。「やりたいこと」はまだ見つからなかったが、地域から必要とされていること、仕事を通じで社会に貢献できることが、徐々に見つかっていった。
亨さんは社員となり、やがて常務として会社を経営する立場に。かつて仕事を教え、見守ってくれた上司や先輩たちは部下となり、亨さんが守っていかなければならない立場に変わった。2013(平成25)年、亨さんが主導し、顧客への進呈用カレンダーを作成。亨さんや社員たちが、小樽港の倉庫群を背景に、スーツを着て遠くを見つめる写真などが、「かっこよすぎるカレンダー」と地元のマスコミだけでなく、全国放送のテレビでも取り上げられ、話題になった。「社員たちに自分たちの仕事の社会的な意義を見出し、モチベーションを高めてほしい」という、亨さんの考えだった。
亨さんは「私たちの仕事は、危険も伴う。それでも、特殊な作業着や防具を身に着け、日夜暑さや寒さを堪えながら頑張っている社員たちは本当に頼りがいがある。社員たちがお客さまの声に耳を傾け、何が必要とされているかを常に考え、地域と会社がともに発展していけるような環境をつくっていくことが、私の仕事」と笑顔を見せる。