小樽桜陽高校(長橋3)演劇部が11月22日、第70回北海道高校演劇発表大会(函館大会)で優良賞を受賞した。
コロナ禍で経験したことを作品に投影したという「隔てよ、乙女。(土野 茂大・小樽桜陽高校演劇部)生徒顧問創作」で6年ぶりの後志支部代表として臨んだ同大会。函館市民会館(函館市湯川町1)で11月19日~23日の日程で開催を予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大を受け、大会直前に各校で撮影した映像による審査に変更、同校演劇部は15日、同校多目的室で大会規定60分以内の同作品を撮影し、同日、大会事務局に発送した。
同校演劇部で部長を務める3年生の渡部萌さんによると、コロナ禍による休校など受け、今までできたことができなくなるという喪失感に襲われたという。場数を踏むことで成長できる演劇部で、公演自体ができないという焦り、部活動ができるようになっても、開催されるかどうかも分からない後志支部大会に向けて台本を作りこんでは不安が募る日々だったという。
渡部さんは「劇場などでのクラスター発生など、演劇を取り巻く世の中の風潮に嫌になってしまうこともあったが、『こんな状況はなかなかない。辛いが、これは貴重な体験ではないか。ならばその体験や今だからこそ感じ思うことを作品にしないでどうするんだ』という意識に変わっていった」と振り返る。
優良賞を受け、渡部さんは「とても不思議な感覚。悔しいうれしい関係なく、取りあえず最後まで大会が行えて安堵(あんど)している。ただ、どのような形でもいいので他校の作品を全て見たい。他校の学生も私たちと同じようにいろんなことに悩んだと思うので、作品を通して共有したかった」と話す。
自分たちでできる範囲の照明と音響を使って臨んだ映像審査を受け、渡部さんは「まず、映像審査をしていただいた審査員の皆さまには感謝を申し上げたい。私たちもあの舞台(函館市民会館)で上演ができなかったのはとても辛いし悔しい。それでも私を含めた3年にとって最後の作品を、いつも部活動をしていた場所で最後に上演をすることができて忘れられない収録となった」と話す。
渡部さんは「応援していただい諸先輩、高校演劇の面白さを教えてくれた全ての方、今までの小樽桜陽演劇部の作品を見てくれた方々、一緒にこの状況を戦ってくれた仲間に感謝の気持ちでいっぱい。演劇部に3年間所属して多くのものを得た。小さいものから大きいものまで、形のあるものや形のないものまで、全て宝物。誰にも譲れない」と話す。「少しでもいいので、函館観光もしたかった。ラッキーピエロや五稜郭タワー、イカめしも食べたかった」とも。