日本製鉄(東京都千代田区)が8月3日、鉄分供給鉄鋼スラグ製品「ビバリーユニット」を埋設した古宇郡泊村地区の海域で海藻の再生を確認したと発表した。
同社が取り組む、国連で採択された「持続可能な開発目標」(SDGs)に合致した「海の豊かさを守ろう」活動の一環。
漁業関係者によると、ウニやアワビなどの魚介類が豊富に採れていた同海域は近年、コンブやワカメの減少により、魚介類を育む藻場が失われる状態となる磯焼けによって、水産業に影響が出ていたという。同社と泊村、古宇郡漁業協同組合の3者では2018年(平成30)秋から、同社が2002(平成14)年から北海道増毛町で行ってきた「海の森づくり」を参考に藻場再生の実証実験を開始。鉄分不足が磯焼けの要因と確認し、2019年11月に同製品を2カ所の海岸線に合計3トン埋設した。
7月に現地の海藻繁茂状況を調査した結果、同海域の海底でホソメコンブやナンブワカメ、褐藻植物など多様な海藻が再生していることが分かり、生態系として地球温暖化対策に寄与すると期待されるCO2の吸収・固定作用(ブルーカーボン)も確認されたという。
泊村の髙橋鉄徳村長は「泊村は日本海に面した漁業の村として栄え、昔から海から多くの資源を享受してきた。近年の磯焼けなどにより、魚介類を育む大切な藻場が失われ続け、漁獲量の減少が懸念されている。このプロジェクトで海藻が再生し、磯焼け以前にはコンブで真っ黒になっていた海辺を思い出し懐かしく思う。これからも、藻場の再生事業を継続させ、海の恵みが多くの人に届くことを期待し、泊村の浅海漁業が発展していくことを願いたい」と話す。
古宇郡漁業協同組合の池守力代表理事組合長は「磯焼けは日本全国の課題。特に北海道の日本海沿岸海域においては、長年の磯焼け現象によって海藻類の繁茂状況が悪化し、浅海資源であるウニやアワビに大きな影響を与えている。プロジェクト活動は今後も継続していく。海藻藻場はブルーカーボン生態系としてCO2を吸収・固定することも期待されていることから、海の森づくりの取り組みは地球温暖化の抑制にも貢献できる」と力を込める。
同社では2002年から北海道増毛町をはじめとした日本全国38カ所で藻場を再生する「海の森づくり」に取り組んでいる。水産業関係者によると、磯焼けは日本各地の海岸約5000キロにわたって確認され、その原因は水温の上昇やウニなどの食害などのほか、鉄をはじめとする栄養分の不足とされているという。同社では海藻類の鉄分不足解消に向け、製鉄プロセスにおける副産物である鉄鋼スラグと腐植土の混合物をヤシの繊維で編んだ袋に入れることで、鉄イオンを腐植酸鉄として長期間持続的に海藻まで届けることを可能とする「ビバリーユニット」を開発。磯焼け地域に設置することで、これまで森から川を通じてコンブなどの海藻類へと届けられてきた腐植酸鉄を人工的に生成し、海藻へと供給する藻場再生プロジェクトに取り組む方針という。